球磨川治水対策に住民の声を

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 29日は県議会本会議で質疑を、そして30日は蒲島知事あてに申し入れを、いずれも球磨川治水の問題で行ないました。
 質疑では、ダムによる治水効果が、気候変動のもとでもはや限定的なものとなっている現実を踏まえるならば、ダムあり治水をたとえ選択したとしても、どっちみちダムの機能喪失の事態を想定した治水対策が必要になるのではないかとお尋ねしました。今回の豪雨災害発災後、全国でダム建設を手掛けているスーパーゼネコン大成建設の会長が、12年前ダムによらない治水を選択した蒲島知事を批判しておられます。いっぽう私が伺ってきた流域住民の皆さんの多くのご意見は、「球磨川は悪くない。川を憎みたくない。これからも球磨川とともに生きていきたい」という声でした。私は質疑で、流域住民の球磨川とのかかわり、治水のあり方を熟慮の上判断した蒲島知事の選択は、県政史に残る大きな功績を残したと強調しました。
 30日は、党県委員会、南部地区委員会とともに、治水対策のあり方について県に申し入れを行ない、田嶋徹副知事が対応されました。治水の方向性を決めていく上では、住民の声を十分にくみ取り、反映させるべきであるということを、かつて県が「ダム、非ダム」の対立解消のために貫いてきた「公平・中立」の姿勢を振り返りつつ強調しました。また「ダムによる治水」の弊害、リスクを指摘しました。とくに人吉・球磨地域にとって、球磨川から享受される豊かな恩恵は、地域の経済、観光、暮らしを支えています。
 12年前、「河川工学の観点からは、球磨川の水害に対して抜本的な対策を実施する場合には、川辺川ダムが最も有力な選択肢」という判断を蒲島知事自身も認定しました。それでもなぜダムによらない治水の追求という道が選択されたのか、それは「治水とは何か」について考察が深められ、流域住民にとって球磨川そのものが、守るべき宝であるという判断に至ったからではなかったでしょうか。この判断を流域住民の実に80%が支持しました。
 こうした歴史的経過を踏まえず、治水対策にダムが(部分的にでも)役立つかどうか、だけでダム建設の是非を判断することは、あり得ないやり方だと指摘しなければなりません。
 流域の復旧・復興の方向性と治水対策のあり方がかかわり合うだけに、「スピード感」が強調される事情は分かります。しかしこれまでの歴史的経過や住民の意向をくみ取らない拙速な判断は、将来に禍根を残すことになります。