観光資源を壊して観光をうたう立野ダム

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 世界ジオパークに認定された、阿蘇ジオパークの見どころの一つに立野峡谷ジオサイトがあります。
 ジオパークとは、「大地の公園」を意味します。何千万年、何億年という、想像もつかないような悠久の年月をかけて形成された自然の地形、化石、地層などが教育や観光に生かされ、その地域の自然の素晴らしさが実感できるところです。
 阿蘇ジオパークの中でも立野峡谷は、健磐龍命(たけいわたつのみこと)のけ破り伝説、国の天然記念物に指定されている北向谷原始林、雄大な柱状節理や白川の清流、轟音とどろく滝など、自然の美しさ、奇跡の景観に圧倒されるスポットです。
 長い歴史の上に形成された、こうした自然や景観を誇る立野峡谷ジオサイトを台無しにして、巨大なコンクリートダムをつくり、観光活用を呼びかける人たちの感覚はどうしたものかと感じざるを得ません。
 日本ジオパーク委員会は昨年9月、阿蘇ジオパークの引き続く認定について、保全や活用を進める地元協議会の組織運営について問題があるとして、今年行われる予定のユネスコの審査までに改善を求める「条件付き認定」としました。
 立野峡谷をつぶしてダムをつくり、世界ジオパーク認定が取り消されたとしても、それでも国交省は「ダムによって観光価値が上がる」などという妄想を抱いているのでしょうか。

 すでに、洪水対策としての立野ダムは、河川整備計画との関係でも必要ないことが明瞭となっています。建設ありきで猛進する国交省、それに盲目的に付き従う自治体でよいのか。勇気ある良識の発揮が必要ではないでしょうか。