息子と買い物

 靴を買いに行った。安売りのチラシを見たからだ。

 「定価9,800円を1,000円」    

 ・・・・えっ? せ、せんえん? 

 これは買いに行くしかない。

 息子もついてきた。「くるな」といってもついてくる息子だ。3年生にもなっても相変わらずの甘えん坊である。

 私が靴を選んでいると、おもちゃ売り場から戻ってきた息子が「おもちゃ買って」と擦り寄ってきた。買い物についてくるといつもこうだ。ガチャポンが置いてあったら間違いなくねだりまくる。おめえ何歳なんだよ。まったく。

「ダメ。買わない」

「一つだけ。ねえねえ」

「買わないと言ったら買わない」

「じゃあお菓子買って」

「買わない!」

 こんな問答を繰り返した後、ようやく彼はあきらめて「車の中で待っとく」といって去っていった。

 代金を支払うと、レジのおじさんが100円余計におつりをくれた。

「これで息子さんにお菓子でも買ってあげてください」

「・・・・・」

 おじさんは私たちのやりとりを聞いていたのだ。ここで自分の懐に入れちゃったら、せっかくの好意を裏切ることになるなあと思い、息子に事情を話してお菓子を買いに戻った。

 息子は、レジのおじさんにお礼を言っておもちゃつきのお菓子(というか、お菓子つきのおもちゃ)を一つ買った。お目当てはやっぱりこれか。

 家に帰って事情を話すと、あきれたのはカミさんと長女。「何でそんなおもちゃ買ってやるのよ!」「おじさんに断ればよかったでしょ!」と散々。あーあ。