先日からの雨で人吉市の胸川が、氾濫危険水位を超えた、とのニュースに緊張が高まりました。胸川といえば土砂が堆積し、草木が成茂し、豪雨の際に氾濫が心配だということでご相談がありましたので、5月24日、球磨振興局土木部の方々と一緒に現地を調査し、「雨期の前に危険個所の対応を」とお願いしていたところでした。
県河川課から、「大きく成長していた木の除去が完了した」とのご連絡をいただいたのが6月19日。ちょうどその日、胸川の危険水位越えのニュースを耳にしたのでした。
人吉市議の塩見寿子さんに状況を伺ったところ、河川から越水するには至らず、一時避難されていた住民の方々も帰宅され、「大雨の前に改修していただいて本当によかった」と口々に感謝されていたそうです。
関係職員の皆さんの迅速な対応に心から感謝です。
被災者に寄りそった支援とは― 国会調査団とともに
5月2日、仁比そうへい参院議員、田村貴昭衆院議員、真島省三前衆院議員らとともに、熊本地震から二年が経過した被災者の実情について、調査活動をおこないました。
住まい再建、生活再建に今なお苦しんでいる方々の実情は、あまり報道されることはなくなりましたが、相当深刻な状況にあります。一人ひとりの被災者の実情を掌握しうる立場にあるのは行政であり、本来ならばまさに行政が、各々の状況に即した支援のあり方について、当事者に寄りそいながら方策を見出していくことが重要でありましょう。
ただ、現状は残念ながら、住民の安全・健康・福祉の増進に責任を果たすべき自治体が、本来の責任を充分に果たすことができなくなっているように感じます。 だからなおの事、いまも放置されている被災者の皆さんの現実を私たちがつかみ、行政に対応を求めていかなければならないと思います。
調査活動では、熊本市、益城町、南阿蘇村、西原村、甲佐町などを回り、町屋再建の問題、一部損壊への支援、応急・みなし仮設に入居されている被災者の方々との懇談、農地被害、交通インフラ復旧、集落再生、健康不安の問題等について調査、聞き取りをおこないました。山積する課題を実感しました。
震災復興など県民要求かかげ政府交渉
25日、諸団体の皆さんとともに、震災からの復興問題をはじめ、各分野での県民要求をかかげて対政府交渉をおこないました。
熊本地震から2年が経過しましたが、住まいや生業、住まいの再建が進まず、たくさんの困難や不安を抱えて苦しんでいる被災者が、なお数多く存在しているもとで、支援が打ち切られ、切り捨てられようとしている状況があります。政府交渉では、被災者のリアルな状況を紹介しつつ、国の責任で被災者に寄りそった支援の強化を求めました。
観光資源を壊して観光をうたう立野ダム
世界ジオパークに認定された、阿蘇ジオパークの見どころの一つに立野峡谷ジオサイトがあります。
ジオパークとは、「大地の公園」を意味します。何千万年、何億年という、想像もつかないような悠久の年月をかけて形成された自然の地形、化石、地層などが教育や観光に生かされ、その地域の自然の素晴らしさが実感できるところです。
阿蘇ジオパークの中でも立野峡谷は、健磐龍命(たけいわたつのみこと)のけ破り伝説、国の天然記念物に指定されている北向谷原始林、雄大な柱状節理や白川の清流、轟音とどろく滝など、自然の美しさ、奇跡の景観に圧倒されるスポットです。
長い歴史の上に形成された、こうした自然や景観を誇る立野峡谷ジオサイトを台無しにして、巨大なコンクリートダムをつくり、観光活用を呼びかける人たちの感覚はどうしたものかと感じざるを得ません。
日本ジオパーク委員会は昨年9月、阿蘇ジオパークの引き続く認定について、保全や活用を進める地元協議会の組織運営について問題があるとして、今年行われる予定のユネスコの審査までに改善を求める「条件付き認定」としました。
立野峡谷をつぶしてダムをつくり、世界ジオパーク認定が取り消されたとしても、それでも国交省は「ダムによって観光価値が上がる」などという妄想を抱いているのでしょうか。
すでに、洪水対策としての立野ダムは、河川整備計画との関係でも必要ないことが明瞭となっています。建設ありきで猛進する国交省、それに盲目的に付き従う自治体でよいのか。勇気ある良識の発揮が必要ではないでしょうか。
「想定外」を想定してはならない、立野ダムの安全神話
20日、立野ダムを考える模擬・住民討論集会に、「県議の会」のメンバーの一員として参加し、発言もさせていただきました。
集会の中で明らかになったことは、ダムは決して「想定外」を想定していない事。
つまり、「もしダムの放流孔が流木等で詰まってしまったらどうするのですか?」・・・・・・・答えは、「放流孔が詰まることはありません」
「もし、ダムサイトの右岸と左岸が、地震で活断層が動き、ずれが生じたらどうなるのですか?」・・・・・・・答えは、「そうした場所にはダムは作りません。立野ダムの場合、右岸と左岸がずれることはありません」。
なぜ国交省がそんな回答ばかりを繰り返すかというと、それ以外の回答が無いからです。というか、そうした事態が発生すれば、対処できない。どうしようもないということを示しています。
だから、彼ら国交省は、「穴詰まりはしない、ダムの両岸は動かない」と回答するしかないのです。
「だけどもしつまったら? もし右岸、左岸がずれてしまったら? どうするんですか?」 ・・・彼らはあくまでこう答えます。「そのような事態は起こりえません」
これは言わば、原発の安全神話と同じです。想定外を想定できない、ダムの決定的欠陥というべき問題です。
けれども、私はこうした構造物は、万万が一の事態が発生した際にも、あくまでも安全に事態の収束を図るように設計されていること、所謂「フェイルセーフ」こそが、絶対に欠かしてはならない鉄則だと思います。フェイルセーフが保障されていない危険な構造物は、つくるべきではありません。
あ、もう一つ、安全神話がありました。「立野ダムによって過去最大級の洪水に対応できる」といいますが、もしも過去最大級を超える、100年に一度、200年に一度の大雨が降ったらダムはどうなるんですか?
彼らは多分、こう答えるでしょう。「そのような洪水が発生することは想定していません」
想定外の事態が発生したら、ダムはもうお手上げ。対応できないのです。むしろ取り返しのつかない大惨事をもたらしかねません。これも原発の安全神話と共通しているかもしれません。
しかし、もしそのような状況に陥ってしまったら、一体誰が責任を取るんですか?